Canon FD35-70mm F2.8-3.5 S.S.C.

アサヒカメラの「ニューフェース診断室」の測定結果が、焦点距離50mm絞り開放の解像度が中央224本、平均148本という値で、ズームレンズの解像力トップのタイトルを20年間保持したという伝説のレンズがこの『FD35-70mm F2.8-3.5 S.S.C.』だ。

以前から評価の高いこのレンズを使ってみたくて探していたのだが、発売時の1973年当時、大卒初任給が62,300円の時代に価格が10万円もした高価なレンズ(現在の価値だと約25万円)が、そんなに数が売れたはずもなく、40年以上前のレンズが使用可能な状態で残存している事自体が希少な事なので、なかなか見つからなかったのだ。

久し振りにジャンクではない、まともな中古品を購入した。だから今回は【ジャンクレンズ散財記】シリーズじゃない。(^^)

ジャンク品じゃないから購入後そのまま使える…ジャンク品ばかり買っているから感覚が麻痺していたが、これって当たり前の事だったりする。僕は愛機『Canon A-1』に、このレンズを装着して鎌倉に向かった。

本当は、このレンズのファーストショットを東勝寺橋で決めたかったのだが、この日は前日の雨のため滑川が増水して川岸に降りる事ができなかったので、鎌倉市街、由比ヶ浜を見渡すことができる見晴台に登ってみた。

この日は最高気温が30度を超えていたので、正直言って登った事を後悔した(笑)見晴台から『祇園山ハイキングコース』の全行程を歩いても、あまり魅力的な被写体が在ると思えなかったので、早々に降りて海を目指すことにした。

前述のように暑いので、材木座海岸は真夏のように賑わっていた。海水浴シーズンを終えて人影疎らな晩夏の海岸を撮りたかったのだが、この日は強いオンショアの風が吹いてダンパー気味ながら波が高かったので、サーファーで賑わっていた。最初の東勝寺橋から、あてが外れっぱなしだが仕方がない。

僕は『晩夏の海岸』に見切りをつけて稲村ガ崎方面に向かった。

稲村ヶ崎公園に着いて、遅めの昼食をとる。ここは鳶が何羽も飛んでいるので、テーブルが在るからといって、そこで食べるのは危険だ。面倒でも頂上の東屋に行かないと鳶に食べ物を奪われるかもしれない。

この日は波が高かったので、岩場に降りずに上から見下ろして岩場で砕ける波を撮った。この写真は岩と海水の質感や波飛沫を良く表現できていて、このレンズの解像力やコントラストの優秀さを感じることができる。

稲村ガ崎を後にしたが、七里ヶ浜付近ではこれといった写真は撮れなかった。『鎌倉高校前駅』はスラムダンクの聖地巡礼の人々を構図から外すのは不可能なのでパスして、そのまま江ノ島に向かうことにした。

江ノ島に着く頃には日没が迫っていた。僕はターゲットを夕日に定めて、良い撮影場所を探すことにした。『岩本楼』裏の西浦は太陽の向きが悪いのでパスして、下道(裏参道)から稚児ケ淵を目指そうとしたが、日没までに到着できないと判断し、弁天橋から夕日を狙うことにした。

この日は富士山が雲に覆われてしまってるけど、下道(裏参道)の、ちょうど真ん中辺り。ここはお気に入りの撮影場所…

弁天橋からの夕日、もう少し雲が少なければ…

よくズームレンズを評価する言葉で「単焦点並みの描写」と云う言葉がある。僕はこの言葉をあまり好いてはいないが、このレンズは本当にそれに近い能力を持っていると思う。実際このレンズの焦点距離50mmでの性能は、解像度だけなら『FD50mm F1.8』とほぼ同等だ。しかし、このレンズがあれば『FD50mm F1.8』は不要とはならない。ズームレンズとしては大口径だが、開放F値が暗いこのレンズは、50mm単焦点レンズを完全に置き換える存在ではないのだ。

だが、僕は「性能」「表現力」「使い勝手」を高水準でバランスさせている、このレンズが大いに気に入ってしまったので、今後はこのレンズを中心に写真活動を続けていくことになるだろう。

『Canon FD35-70mm F2.8-3.5 S.S.C.』は僕の期待以上の逸品だった。