アサヒカメラの「ニューフェース診断室」の測定結果が、焦点距離50mm絞り開放の解像度が中央224本、平均148本という値で、ズームレンズの解像力トップのタイトルを20年間保持したという伝説のレンズがこの『FD35-70mm F2.8-3.5 S.S.C.』だ。
以前から評価の高いこのレンズを使ってみたくて探していたのだが、発売時の1973年当時、大卒初任給が62,300円の時代に価格が10万円もした高価なレンズ(現在の価値だと約25万円)が、そんなに数が売れたはずもなく、40年以上前のレンズが使用可能な状態で残存している事自体が希少な事なので、なかなか見つからなかったのだ。
久し振りにジャンクではない、まともな中古品を購入した。だから今回は【ジャンクレンズ散財記】シリーズじゃない。(^^)
ジャンク品じゃないから購入後そのまま使える…ジャンク品ばかり買っているから感覚が麻痺していたが、これって当たり前の事だったりする。僕は愛機『Canon A-1』に、このレンズを装着して鎌倉に向かった。
稲村ガ崎を後にしたが、七里ヶ浜付近ではこれといった写真は撮れなかった。『鎌倉高校前駅』はスラムダンクの聖地巡礼の人々を構図から外すのは不可能なのでパスして、そのまま江ノ島に向かうことにした。
江ノ島に着く頃には日没が迫っていた。僕はターゲットを夕日に定めて、良い撮影場所を探すことにした。『岩本楼』裏の西浦は太陽の向きが悪いのでパスして、下道(裏参道)から稚児ケ淵を目指そうとしたが、日没までに到着できないと判断し、弁天橋から夕日を狙うことにした。
この日は富士山が雲に覆われてしまってるけど、下道(裏参道)の、ちょうど真ん中辺り。ここはお気に入りの撮影場所…
弁天橋からの夕日、もう少し雲が少なければ…
よくズームレンズを評価する言葉で「単焦点並みの描写」と云う言葉がある。僕はこの言葉をあまり好いてはいないが、このレンズは本当にそれに近い能力を持っていると思う。実際このレンズの焦点距離50mmでの性能は、解像度だけなら『FD50mm F1.8』とほぼ同等だ。しかし、このレンズがあれば『FD50mm F1.8』は不要とはならない。ズームレンズとしては大口径だが、開放F値が暗いこのレンズは、50mm単焦点レンズを完全に置き換える存在ではないのだ。
だが、僕は「性能」「表現力」「使い勝手」を高水準でバランスさせている、このレンズが大いに気に入ってしまったので、今後はこのレンズを中心に写真活動を続けていくことになるだろう。
『Canon FD35-70mm F2.8-3.5 S.S.C.』は僕の期待以上の逸品だった。